【ドイツ🇩🇪オーケストラ】留学生必見!アカデミー生が語るオーディション事情

本ページの情報は21年8月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。

こんにちは!ドイツに留学してそろそろ5年目

最近デトモルトからベルリンに引っ越したヴィオラ奏者の辻菜々子です。

今回はドイツのオーケストラのオーディションとアカデミーの制度について、私の経験とともに紹介していきたいと思います!

オーディションを見つける、応募する方法

ドイツでは主にmuvac ( muvac.com ) というウェブサイトが使われています。

楽器を選択すると現在空きのあるオーケストラがずらーっと出てきます。それぞれどんな契約か(正団員、契約団員、アカデミーなど)オーディションの日程課題曲申し込み期限などが掲載されています。

このサイトのすごいところはここから直接応募できること!まずは自分の学歴やこれまでのオーケストラでの経験、プロフィール写真などを登録します。またコロナ渦以降、はじめにビデオ審査、通ったら現地でのオーディションに招待される、という方法が増えたので、その場合はサイト上にビデオをアップロードします。

さらに、なぜこのオーケストラに応募したのかや、自分のモチベーションや強みについて書いて提出しなければいけないところも多いです。

もしドイツ(ヨーロッパの他の国も)のオーディション情報に興味があるのなら、登録必須!無料で使えて、言語はドイツ語以外にも英語、フランス語、スペイン語で利用可能です。ウィーンフィルやバイエルン放送響などの超一流オーケストラの募集も混ざっているので、今すぐ受ける予定がなくてもただ見ているだけで面白いです。

※募集にmuvacを使っていないオーケストラもあるので要注意!!その場合は各オーケストラのサイトから空きをチェックしてそこから応募するか、事務局に直接メールを送ります。

オーケストラアカデミー(Orchesterakademie)とは?

ドイツのオーケストラにはアカデミーという研修制度があります。団員さんと同じようにオーケストラの中で演奏でき、毎月奨学金としてお給料がもらえます(約10万円ほど)。

契約にもよりますが1〜2年間、月に10日~15日間リハーサルやコンサートに参加し、その他にも定期的に団員さんから個人的にレッスンを受けたり、メンタルトレーニングの授業や実際にホールでオーディションの予行練習、アカデミー生による室内楽のコンサート、など様々な経験ができます。

またアカデミーを受ける際には年齢制限が設けられています(だいたい26~28歳まで)。音大に在籍していることが前提のところも多い印象です。

ホールで行われたオーディションのトレーニングの様子

私がアカデミーのオーディションを受け始めたのは、ドイツに留学してから1年ちょっと経った頃です。ドイツでの生活も落ち着き、学校のオーケストラでドイツ語でのリハーサルにも慣れてきたタイミングでmuvacから3つのアカデミーに応募したところ、幸運なことにベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団のアカデミーに合格しました。

1番緊張したのはライブ配信のプロジェクトで、たくさんのマイクとカメラに囲まれながら弾いたブラームスの交響曲は一生忘れられません(現地に聴きに来られない日本の家族に見せてあげられたのは嬉しかったです)。

本拠地のコンツェルトハウスベルリン
  ツアーでザルツブルクへ

また驚いたのは、リハーサルが始まる前にヴィオラの団員さん全員が「おはよう~」「元気にしてた?」などと軽く挨拶しながら、握手やハグをしてまわるのが習慣になっていることです。コミュニケーションを大切にしていてとてもグループの雰囲気がよく、こういうことがそのまま良い音楽に繋がっていくのだなと感じました。

また同じ時期に弾いていたアカデミー生たちとは今でも交流があり、情報交換をしたり飲みに行ったりします。将来オーケストラで働きたい、という同じ目標を持つ仲間ができるのもアカデミーの良さだと思います。

アカデミー生で写真撮影
本番後に飲むビールは最高

そもそもなぜアカデミーをするのか?

正団員のオーディションは応募した全員が受けられるわけではなく、オーケストラから招待状をもらう必要があります。アカデミーや契約団員などの経験、またはコンクール歴がないと招待してもらうことが難しいと言われています。あるオーケストラは2つある席に200人の応募があったそうで、そのうち30人しか招待状をもらえなかったそうです(そして結局誰も取らなかったとか…)。

  ベルリンにある国会議事堂の屋上

オーケストラのオーディションに受かる、というのは本当にご縁だと思っています。

「50%は自分の演奏の出来だが、あとの50%はすでに取りたい人がいるなど、オケの事情や他の参加者のレベルによるものなので、うまくいかなくても深く落ち込む必要はない。」とデトモルトの教授はおっしゃっています。

ドイツには全国あちこちにオーケストラがあり、場所によっては何時間も電車に乗らなければいけなかったり(遅延、運休をしたらもっとストレス…)、言語の問題やビザの期限など日本でオーディションを受けるより精神的にも大変だと思います。

ですが、オーディションを受けに行った都市の名物を食べたり、友人が住んでいれば連絡して会ったりなどうまく息抜きをして、前向きな姿勢でいることも大切です!