【音楽留学のHOW TO】コンセルヴァトワールを掛け持ち!? ‟まずは自分でやってみること”

フランス在住 フルート奏者 三宅真依さん(左)

Profile

京都府出身。同志社女子大学音楽学部卒業。在学中、アメリカ J.ベーカーマスタークラスにて第1位及びヤマハ賞受賞。渡仏後、パリ・エコールノルマル音楽院高等演奏課程とヴィル・ダブレイ音楽院にてフルートのディプロム、またクラマール音楽院にてピッコロのディプロムをそれぞれ取得。2015年から1年間パリを拠点とするヌーヴェル・ヨーロッパ室内管弦楽団【Orchestre de Chambre Nouvelle Europe】のオーケストラ研修員として経験を積む。これまでにフルートを市川智子、清水信貴、P-Y.アルトー、G.スガンバロ、J-P.ピネ、ピッコロをP.デュマイの各氏に師事。

留学のキッカケ

 今までに師事してきたピアノやフルートの先生方が海外留学を経験されており、その話を聞いているうちにいつしか海外で生活することに憧れを持ち、今の自分の実力も試してみたいと思うようになりました。本格的に留学を意識したのは大学生の頃。当時フランス人作曲家の曲が好きでよく演奏していたことや、師事したいフルートの先生がフランスにいたこともあり、3回生になるとフランス語を習い始めたり貯金をしたりと、少しずつフランス留学を意識して準備をしていました。とはいえ、実際に留学を身近に感じるようになったのは、留学すると決めた夏の半年程前だと思います。

準備期間~受験について

 留学経験のある知人や留学中の知人を介して情報収集をし、まずは学校の仮登録を進めビザを取得する準備をしました。私の場合は、大まかに以下のような流れでした。

  • 4月 パリエコールノルマル音楽院に仮登録・住居探し
  • 6月 ビザを取得
  • 7月 フランスに渡って語学学校に通う
  • 9月 音楽院へ本登録


エコールノルマル音楽院は、本登録が完了すると「レベル分けチェック」があります。師事したい先生に直接演奏を聞いてもらい、その場でどのレベルに入るか決めてもらうという簡単なテストでした。2年目からは、9月頃になるとパリ地方音楽院やリュエイユマルメゾン、クラマール、ヴィルダブレイなど、様々な音楽院に受験をしに行きました。
フランスの試験は、会場に入った際に審査員と少し会話をしたり、会話の中で審査員がジョークを言って場を和ませたりと、割と柔らかい雰囲気で迎え入れてくれるため、自然体で試験を受けられるところが、日本とは違うなという印象がありました。

フランスでの授業内容や学校生活で感じたこと

 いくつかのコンセルヴァトワールを掛け持ちしていた時期もあったため、その時は週に1回のフルートとピッコロのレッスンに加え、室内楽の授業もあり、とにかく練習に追われていました。
試験の時期はいつも重なるので、一日中家に引きこもって練習していることもよくありました。

また、私はコンセルヴァトワールを卒業後、パリから少し離れたMetz(メッス)という街で、「楽器を教える先生になるための国家資格(DE)」を取るための学校Cefedem(セフェデム)に通っていました。
生徒は皆、コンセルヴァトワールよりも小さいエコール・ド・ムジークという町の学校などで既に自分の生徒を持ち、教えている子ばかりで、週に3回しか授業はありませんが、子供の心理学や体の仕組みを知るような授業から、実際に近くのコンセルヴァトワールから生徒を借り、子供に自分が30分レッスンをし、そのレッスン内容についてクラスメイト20人程と先生と、良かった点悪かった点などを話し合うような実践的な授業まで幅広くありました。
授業がない日には研修もあり、コンセルヴァトワールで教えている先生の生徒の一部をお借りして毎週レッスンをしていました。それ以外にも授業毎に小論文の提出があったりと、それはそれは毎日大変でした。コンセルヴァトワールに通っていた頃は自身の演奏に集中していましたが、Cefedemでは教育者として学ぶことが本当にたくさんありました。特に感じたフランス人教育者達が大切にしていることは、「他の学科(ダンス・演劇)との繋がり」です。繋がりを意識し過ぎてスケジュールが複雑化していることは否めないですが、音楽だけを学ぶのではなく、音楽とダンスの生徒が一緒にコンサートをしたり、一緒に学ぶ授業があったりと、子供達にとっては視野が広がり授業も充実していると感じました。また、楽器の基礎を学ぶと早い段階から現代音楽に触れさせるところも、フランス人が現代音楽に全く抵抗がない理由だと感じました。結局、DEの資格は私には難しく取得できなかったのですが、通っていた1年間で得たものは計り知れず、今も自分の生徒にレッスンをする時の基盤となっていますし、一緒に頑張ったクラスの友人とは、今でも頻繁に連絡を取っています。

現地での生活

 初めて一人暮らしをしたのがパリだったので、留学当初は右も左もわからず大変でした。学校の登録から携帯の契約、マルシェもフランス語で会話をしないといけないから難易度が高く、とにかく外に出る時はどんな時でも気合いを入れて出かけていました。帰宅するとフランス語疲れでぐったりでした。それでも「まずは自分でやってみること」をモットーに、一人でどうしても出来なかったら誰かの力を借りても良しというルールを自分に課せて生活していました。そうすると、自分で何とかするし(実際なんとかなったりする)、それが自信にも繫がりました。このルールは海外生活が長くなった今も守り続けています。休日は公園でゆっくりしたり、趣味のブロカントを探しに蚤の市へ足を運んだり、お気に入りのパン屋やケーキ屋を見つけたり、パリの中は狭く歩けるためどれだけ散歩をしても飽きないし、いつもと違う道を歩けば自分好みのお店を見つけたりと、新しい発見もあり楽しいので、いつもどこかへ出かけるようにしています。

おわりに…

 私はフランス人の「人生を楽しむ、心が豊かになる」という考え方がとても好きです。無理をせず自然体で生きているからこそ、感情が豊かなんだと思います(時に感情的すぎますが笑)是非、一つのことに囚われすぎず、広い視野を持って人生を楽しんで、色んなことにチャレンジしてみてください!