前編はこちら🎶
履修生にインタビュー!
◯小山 舞(こやま まい)さん
国立音楽大学 演奏・創作学科 鍵盤楽器専修(ピアノ専攻)
◯髙西 璃子(たかにし りこ)さん
国立音楽大学 演奏・創作学科 声楽専修
──マネージメント・コースを履修したきっかけは何だったのでしょう?
小山さん:元々2年生の時から学芸員課程*を履修していたのもあり、演奏だけではなく、垣根を超えて学びを深めたいと思ったことがきっかけです。
髙西さん:私は元々ショーやコンサート等を作ってみたくて、いつかそういった職業に就きたいと思い、履修希望しました。
*学芸員課程…博物館、美術館等に勤務し、資料の収集・保管・展示及び調査研究等をおこなう「学芸員」の資格を取得できる課程。
──マネージメント・コースを履修するには試験を受ける必要があるとのことですが、どのような試験でしたか?
髙西さん:志望者が思ったよりいました。私には結構難しかったですね。試験では実際に自分でコンサートを企画するんです。
小山さん:講堂の小ホールを想定して、「音大生なら聴いておきたい100曲*」の中から選んでプログラムを構成して…チケットの値段を何円に設定するかまで自分で考えました。加えて小論文もあったので、時間内に行う課題はかなり多かったです…。
*国立音楽大学の学生全員に配られるもので、音大生なら知っておくべきクラシック音楽が100曲まとめられたもののこと
髙西さん:そうそう!私は時間が足りなくて大変でした。
小山さん:あと、時事問題もありました。最近起きたニュースを挙げて、それに対する自分の考えを書くという。
──結構ハードですね…。試験を受ける際、どのような勉強をされましたか?
髙西さん:「音大生なら聴いておきたい100曲」を覚えましたね。あとは事前に企画を考えておきました*。
小山さん:私は《展覧会の絵》を実際に1枚ずつ投影しながら演奏するというコンサートを企画しました。面接では「これは実現できません」と現実的なことを言われてしまったのですが(笑)
*2020年度の試験内容は(1) 小論文、(2) 面接の2種類で、企画をする課題の有無は当日まで知らされていませんでした。例年同じ課題とは限りませんので、受験を検討される場合は募集要項をご確認ください。
──そのあと実際にマネージメント・コースに入ってみて、いかがでしたか?
髙西さん:私は演奏者だけがキラキラ輝いていると思っていたのですが…。スタッフがいてこその演奏会であり、一つのものを作り上げるという点では、演奏者もスタッフも同じレベルで同じ力を発揮しないといけないということをコースを通じて学びました。
──マネージメントを学んだことをご自身の専攻に活かせていると感じることはありますか?
小山さん:普段は楽譜と向き合って音を出すための演奏表現を学んでいますが、マネージメントの授業では、企画書を1から作ったりプレゼンテーションをしたりと、自分の思いを全て言語化して伝えなくてはいけなかったので、言葉で表現する大切さを学びました。だからこそ曲に取り組む上でも、音だけではなく、自分の中に言葉として落とし込んでから演奏するということを意識できるようになりました。
──履修した2年間のなかで印象に残ってることを教えてください。
髙西さん:履修生全員が毎週違う企画を考えてきて、それに対して「どう収益をあげるのか?」などと意見を言い合ったことですね。そういった細かいところにも目を配らなきゃいけないということを学びました。あと、演奏者に対して「こういう演奏をしてほしい」とか演奏会自体のコンセプトをしっかり言語化して伝える必要性を今回の修了演奏会を通して痛感しました。
小山さん:やっぱりこの時代だからこその「芸術と社会の繋がり」を考えさせられたことです。芸術が不要不急ってみなされた時期もあったということも実感したし、それに対して芸術は不要不急じゃないっていうことを発信したいなって強く思いました。
──カリキュラムには「インターン」がありますが、実際現場に行ってみていかがでしたか?
髙西さん:小山さんとは所沢市民文化センター ミューズのインターンが一緒だったよね。*
小山さん:うん。所沢ミューズでは実際に公演のスタッフとして舞台袖やリハーサルにも立ち会ったり、お客様のご案内もしました。
髙西さん:スタッフの方々がキビキビ動いていたのが印象的でした。もう少しゆったりした感じの雰囲気だと思っていたので…(笑)
*2020年度は、所沢市民文化センターミューズの他に「新国立劇場」「株式会社テンポプリモ」の計3社でインターンを行い、その中から2社に参加できるというものでした。
──修了演奏会では(音楽ホールでの)インターン等での経験は活きましたか?
髙西さん:そうですね。特に「キビキビ動く」というのは意識しましたね。誰かの指示で動いていたらダメだなと。みんなで「どうするどうする」って言い合ってる場合じゃないから、自分が動いた方が早いなって。
小山さん:髙西さんと一緒に舞台転換をしましたが、頼もしかったです!どんどん次の展開を考えていかなきゃいけなかったのでめまぐるしかったんですけど、みんなで協力してできたかな。
──今回の修了演奏会には、国立音楽大学の新一号館にある楽譜パネル*を実際に演奏するというプログラムがありましたが、この企画にたどり着いた経緯は何だったのでしょうか?
小山さん:前提として「国立音大の魅力を再確認してもらいたい」という想いが土台にあったんですが、そこを起点に企画を考えていく中で、ちょうど新一号館完成から10周年だということを知り…。10周年は区切りが良いですし、新一号館のパネルに着目してコンサートに組み込んだら面白いのではと思ったのが経緯ですね。
*楽譜パネルに関してはこちらをご覧ください→https://www.lib.kunitachi.ac.jp/panel/panel.htm
──企画する上で特に難しかったことを教えてください。
髙西さん:ほとんど全部ですね(笑)そもそも企画の内容が全然決まらなかったから…。パネルの案に決まったあとも、それをどういう風に演奏会に落とし込んでいけば良いのか辿り着けなくて。ただの演奏会では面白くないし…今回のテーマとなった「散歩」案が出るまでは皆で試行錯誤しました。でも、こんな風に演奏会が作られていると知ることができる良いキッカケだったなと思います。
──自分たちで1から演奏会を作るというのは貴重な経験ですよね。そんな舞台裏の様子はどのような感じだったんですか?
髙西さん:リハーサルの時はひたすら不安でした。初めて見る楽器もあったので、どうやって配置するのかも分からず…。
小山さん:でも、リハーサルをしていくうちに要領をつかんできて、次の動きを予想できるようになったので、最後は全員の連携が取れていたかなと思います。あと、履修生の専攻が声楽やピアノ、打楽器、管楽器とちょうどバランスよく揃っていたので、各々の専攻ごとの強みを生かして動けたというのは大きかったですね。あと、今回は転換時に動画を流したので、その動画との兼ね合いも難しかったですね…。
──実際にこのコースを履修してよかったなと思いますか?
髙西さん:履修して良かったです。普段はなかなか交わらない他専攻の友人達と一緒に演奏会を作り上げていくということが何より楽しかったです。
小山さん:確かに!あとはもっと早い段階から対面で話し合いとかできたらよかったですね。3年生の時はほとんどオンラインだったので。インターンはできたけど…。そういう意味では恵まれてたかな。2年間大変な状況だったけど、全て中止!にはならなかったので。
──コロナ禍で学ぶのは大変ですよね。
小山さん:はい。それこそ対面授業に戻ったのが4年生の後期に入ってからだったので、実際に先生や履修生に会ったらほっとしました。
髙西さん:オンラインだと自分が話していいのか雰囲気が分かりづらくて、やっぱりどことなく見えない壁がありました…。
──お二人とも卒業後はホテル業界にご就職されるとのことですが、このコースを通して今後も活かしていきたいことはありますか?
髙西さん:お客様が楽しむことを念頭に置いて演奏会の企画を考えてきたので、お客様が喜んでくれるサービスをするということを今後も常に意識したいです。
小山さん:マネージメント・コースでは音楽を通して魅力を発信したり、素晴らしさを知ってもらうことを学んだので、音楽に限らず、例えば「その土地が好き」とか「その場所が心の拠り所になる」ということを自分でも感じながら、お客様にも感じてもらえるようにしたいです。まず自分が「好き」と思うことを伝えていけたら良いなと思います。
取材協力:国立音楽大学