【Meet The Orchestra】日本発、ポップス専門オーケストラ「NIPO」に迫る!大学時代の仲間とともに”やりたいこと”を実行するチカラ。

作編曲家・鍵盤奏者の岩城直也が率いるNaoya Iwaki Pops Orchestra(NIPO)。
世代を超えて愛される幅広いポップス音楽に煌めきを与え、新しい魅力を引き出す世界随一の音楽集団を目指します。
引用:公式Instagramより

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▽公式Instagram
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──Naoya Iwaki Pops Orchestra(愛称:NIPO)は設立したばかりだとお聞きしていますが、その原動力はどこから来ているのかでしょうか?

直也さん:『音楽が好きで仕方がない!』、ただそれだけな気がします。もちろん、こういう音楽を人に伝えたいという面もありますが、『だって好きなんだもん!』ただそれだけで音楽を書き、信頼する仲間たちと一緒に音楽を生み出すことが結果的に聴く人の心が動くことに繋がると信じています。

自分の原点である『音になる喜び、音を仲間と共有できる喜び=音楽が大好き』っていう気持ちをもって走り出した先に大学時代や仕事をする中で出逢った素敵な仲間たちがいたし、NIPOの立ち上げで力を合わせた仲間もいた。「この人たちと一緒に音楽をやったら絶対に良いものが生まれる」って思わせてくれて、そしてそこで良いものが生まれたら「もっと良い譜面を書かなきゃ!」という気持ちが高まるので、彼らと出会ったこと自体も原動力なのかもしれません。

──構成や企画は熟考されているかと思います。その中で工夫していること・大事にしていることを教えてください。

直也さん: 聴きたい、弾きたい、共有したい、というこの3点がプログラムを作っていく上でのポイントだと思います。8月は「海」をテーマに、J-popや昭和歌謡、映画音楽、ミュージカル、童謡などを取り入れていますが、ただ色々なものがごった煮で存在しているのではなく、アレンジや音楽感が軸になります。また今回は挑戦の一つとして、ゲストの大野拓朗さんが歌う曲以外は「オーケストラのみ」で世界を創り上げます。これまではフロントにシンガーやソリストがいて、オーケストラがともにアンサンブルをするというプログラム構成だったので、NIPOとしての新たなチャレンジということになる。必然的に僕のアレンジが肝になってきてしまうので(笑)。さまざまな期待を裏切らないようなものを書きたいなと思っています。ワクワク・ドキドキですね。

この数年、留学先のアメリカや旅先のヨーロッパで様々なオーケストラの演奏を聴いたり、ブロードウェイ・ミュージカルなどの舞台を観て勉強しています。プログラムを作ることと同じようにアレンジで音楽をどう作るかは切り離せないので、良いものを伝えるためには“曲のアレンジをどうするか”が鍵だと気づきました。根幹には「良いもの」はずっと残っていくし、世代を問わないと思います。クオリティーを確保するのはスタートラインで、そこからどう本当に良いものを作るかを自身の挑戦と課して、今回のプログラムを作っていきたいです。

ー直也さんが編曲する上で、ジャンルの違いなどは意識されていますか?

直也さん:一昔前は(人によっては)どこかクラシックが上位でポップスは別物と考える人も少なくなかったですし、今も一定数はいると思います。でも、何千年という長い歴史の中でもさまざまな音楽が影響を受けあって今日に至るわけで、そこには上も下もありません。 

一般的には音大ってクラシック音楽を突き詰めるイメージがあるかと思いますが、みんなプロのミュージシャンとして社会に出てそれぞれが多種多様な経験をし、感ずるところがあって、そしていま一緒に音楽をやっています。

もちろんジャンルに隔てがない一方で、それぞれの歴史やグルーヴ、ニュアンスなどを持っているので、みんなで研究して突き詰めていきたいですし、そこからどういうものが生まれるかが大事だと思います。

──直也さんは音大出身で学生時代から様々な活動をされていますが、大学時代はどのように学生生活を過ごしていましたか?

直也さん:振り返ってみると、大学時代はがむしゃらにやるしかなかったですね。1年生の時は芸術祭で弦楽器の仲間たちと演奏し、2年生ではサウンド・パティシエ・オーケストラというものを立ち上げました。3年生の時には玉置浩二さんのオーケストラのアレンジという初めての大きなお仕事をし、エレクトーンのコンクールにも出てたので三つ巴、四つ巴の両立という感じでした。

配分というよりも「とにかくこなす、やりたいこともやる!」という毎日だったかな。。「こうしておけばよかった」という失敗もたくさんありますが、それを次に活かそうということを繰り返して気がつけば10年経ったなと感じています。失敗を恐れずに何でもトライすることが大切だと思います。

何よりも、「あなたの音楽なら一緒にやるよ」と言ってくれる素晴らしい仲間でありプレーヤーであるみんなが僕の周りにいてくれたからこそ今の自分があるので、感謝をし続けながら、みんなを信頼し、苦楽をともにしながらとにかく進んでいく、そうして続けていくことで素敵な出逢いに繋がるものなのだなと思います。

大学時代、プレイヤーの仲間たちの出す音が頭の中にあって、「この人が弾くならこんなフレーズがいいかな」と想像しながら譜面を書いていました。それを音にした時、彼らからどんなアンサー(音楽)が返ってくるか?というのが毎回楽しみで。それが今につながっていると思うと当時そういう活動をしてよかったなと思います。やりたいことがあったら躊躇せずにやってみたり、人に会ってみたり、そうやって繋がりを作って出逢いが生まれます。やりたいことをどうにかして実現する力を持つことが大切ですし、それには精神力も必要ですね。

──長年「音楽」と向き合っていると辛くなることもあるかと思うのですが、そんな時どのように乗り越えていますか?

直也さん:幸か不幸か、音楽を嫌いになったことは一度もなくて、自分にとって音楽は無くてはならない存在であり続けてきました。でも子どもの頃コンクールに出ては落ちという経験があったり、仕事で失敗してしまうことや、留学時には課題が多すぎて何も手につかなかったことも。ちなみに、直近のショックなことを乗り越える手段は「とにかく寝る」(笑)

特に留学中、母国語で“深い部分”を話せないというフラストレーションや寂しさ、孤独を感じました。コロナ禍でいろいろなことがありましたが、だからこそそれが音楽になるし、音楽で昇華したいんだと気がつきました。

短期的なものは寝る、長期的なものは時間が解決するというメンタルの元、とにかく次に進む。じゃないと人生面白くないじゃん!って思います。

──時間が解決してくれることって確かに多いですよね。

直也さん:「自分ってなんだろう」って悩む時は誰しもありますよね。僕も、アメリカに行って「自分ってなんてちっぽけなんだろう」なんて、ベッドで天井を見つめながら思ったり。世界を見渡せば自分よりもっと書ける人、弾ける人はたくさんいるわけですから。でも、今までの経験を通じて自分にしかできないものがきっとある、そう考えるようにしています。音楽に限らず。

また、たとえ失敗してもまた違う世界があるし、違う言語が話せたなら日本に留まる必要も無い。異なる業種とコラボしたり、新しく自分で開拓していくこともできる。だからこそ、人生どこへ行って何をしてもいいと思えることも、とても大事だと思います。

──最後に、おとぺディアの読者に向けてメッセージをお願いいたします。

直也さん:学生時代、たくさん迷っていいんだと思います。迷える時間と環境があることは幸せなことですし、途中で目標を変えたって戻ったって、音楽から離れたって、何をしてもいい。大切なことは、その時々の夢を持つことだと思います。その後、思っていたものとは全然違う人生を歩むとしても、その時々で『好き』を耕すことが大事なのかなって。音大に行ったら絶対に音楽に携わる仕事をしないといけないわけでもなければ、どういう仕事が凄いとか偉いとかそんなものはなくて。人生のどこかで何かに活かせる可能性だって十二分にある。だからこそ『好き』を育てることの大切さが、今の学生さんたちに伝わればいいなと思います。

また、とにかくさまざまな音楽に触れることも、ものすごく大切です。自分の専門としていることだけ知っていれば良い、なんてことは決してありません。音楽が生まれたのは紀元前5000年ほど前といわれていて、音楽を楽譜に表すようになったのは長い歴史の中で見ればごく最近の話。そして地球は広くて、さまざまな音楽やそのヒストリー、それぞれの影響、そして在り方・愛され方がある。もちろん一生かかってもそのすべてを知ることは出来ないけれど、それらに少しでも触れることで生まれる“無知の知”や、自分の専門分野への影響は多かれ少なかれある。『自分にとって音楽ってなんだろう?』『何を目指して走っていけば良いんだろう?』そんな私たちの誰しも抱く疑問にも手を差し伸べてくれるヒントであると、僕は信じています。


公演情報
Naoya Iwaki Pops Orchestra
場所:府中の森芸術劇場 ウィーンホール

2022年8月16日(火)18:30開場 19:30開演
ゲスト:大野拓朗
2022年8月17日(水)12:00開場 13:00開演
Music Summer by the NIPO

チケット情報
■8月16日(火) https://eplus.jp/sf/detail/3671050001-P0030001P021001?P1=1221 ■8月17日(水) https://eplus.jp/sf/detail/3674480001